「30日以内なら戻せるが、期限を過ぎたら二度と戻らない」という公式アナウンスの一方で、ウェブ上には「30日を過ぎた写真もこのツールで100%復旧」と謳うサードパーティ製ソフトウェアの広告が溢れています。この30日過ぎた写真の復元真相について、iOSのセキュリティアーキテクチャの観点からメスを入れます。
iPhoneに採用されているストレージ構造(APFS)では、ファイルごとに異なる暗号化キーが割り振られています。「最近削除した項目」の中で30日間のカウントダウンを終えたデータ、あるいは手動で最近削除した項目 完全削除を実行したデータは、ファイルそのものが上書きされる前に、まず「暗号化キー」がSecure Enclaveから完全に消去されます。暗号を解く鍵が存在しない以上、どれほど高額な市販復元ソフトを使っても、端末内の生データを視覚可能な画像として再構成することは理論上できません。
では、なぜネット上で「復元できた」という報告が存在するのか。その実態は端末ストレージからの復旧ではなく、クラウドや外部キャッシュからのサルベージです。iCloud写真の復元機能によってクラウドサーバー側に一時保管されていた整合性データ、あるいはPCで取得した暗号化バックアップの内部履歴、さらにはメッセージアプリやSNSの下書きキャッシュに残っていた画像が復旧したに過ぎません。「本体のみで30日過ぎた写真を魔法のように蘇らせる手段」は、警察のサイバー犯罪捜査レベルの特殊解析を除き、一般には存在しないのが冷徹な事実です。