1970年代の竣工当時、この建物は先進的なデザインと堅牢な構造で一世を風靡した。重厚な石造りのエントランスと広々とした吹き抜けは、当時の高度経済成長に沸く日本経済の活気をそのまま体現していた。しかし、時代の経過とともに設備は陳腐化し、耐震性の不安やエネルギー効率の低さが課題として浮上。賃料水準の低下と空室率の上昇が重なり、近年では建物の存続自体が危ぶまれる厳しい状況へと追い込まれていた。
「このまま壊してしまうのは容易だが、街の記憶そのものを消し去ることになる」。そう語る関係者の葛藤は深かった。解体して最新の超高層タワーへ建て替える案も浮上したが、莫大な建設コストと膨大なCO2排出量が障壁となった。結果として選ばれたのは、既存の構造躯体を最大限に活かしながら内部を完全刷新する「リプレイスではなくリボーン」という高難度の選択だった。