法律相談の現場でも極めて多いのが、浮気の定義と法的責任をめぐる混乱です。民法第770条第1項第1号に定められた裁判上の離婚事由である「不貞行為」とは、判例上、配偶者以外の異性と自由な意思に基づいて肉体関係(性交渉またはそれに準ずる行為)を持つことを指します。したがって、厳密な法律用語としての不貞行為の境界線という観点では、キス単体は不貞行為そのものには該当しないケースが一般的です。
ただし、これで「キスなら法的な責任を問われない」と安心するのは完全な誤解です。民法第709条の不法行為に基づき、配偶者としての権利や平和な婚姻生活を侵害されたと認められれば、損害賠償請求(慰謝料請求)の対象となります。一度限りの過失によるキスであれば請求が棄却されるリスクもありますが、複数回にわたる親密なキスや、交際実態を伴う継続的な関係であれば、離婚事由と慰謝料請求が法廷で正式に認められるケースは珍しくありません。
気になる不倫キスの慰謝料相場は、肉体関係を伴う不倫(一般的に150万〜300万円程度)に比べると低くなる傾向があり、概ね30万〜100万円前後が実務上の目安です。もしそのキスが決定打となって別居や離婚にまで至った場合は、精神的苦痛の度合いが重いと判断され、100万円以上の高額な支払いが命じられる判決も存在します。