グローバルな労働現場を揺るがした「静かな退職(Quiet Quitting)」は、日本の職場においても不可逆な現実となった。必要以上の過剰な労働を拒み、契約の範囲内での最小限の業務にとどめるこのスタイルは、若い世代を中心とした現実的な自己防衛策として定着している。同時に、資産を形成して早期リタイアを目指す「FIREムーブメント」も一部の投資好きの流行を超え、生き方の重要な選択肢となった。
実業家の西村博之(ひろゆき)氏は、YouTubeなどの発信において「会社に尽くしても企業は個人の幸福を保障してくれない」という冷徹なリアリズムを繰り返し強調する。この主張が数多くの働く人々に深く刺さる背景には、終身雇用の形骸化と努力が報われにくい経済状況がある。労働経済学の視点からも、インセンティブが不十分な環境で自己犠牲を払うのは経済合理性に欠けるという指摘がなされており、人々の意識は冷ややかな実用主義へと移り変わっている。