彼女の凄みを語る上で避けて通れないのが、第37回日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞と最優秀助演女優賞のダブル受賞という快挙を成し遂げた伝説的出来事だ。なかでも映画『さよなら渓谷』で見せた、絶望の淵に立ちながらも静かに生を噛み締める複雑な心理描写は、今なお日本映画史に残る白眉として語り継がれている。
極限状態の心理を演じ切るため、撮影現場で彼女が注ぎ込んだ精神的エネルギーは凄まじいものだった。監督やスタッフとの緊張感あふれるやり取りの中で生み出された数々の名シーン。日本アカデミー賞協会が与えた最高の賛辞は、彼女が己の魂を削って役に没入したことの何よりの証左と言えるだろう。