鹿児島県が誇る最高峰のブランド食材「かごしま黒豚」。その繊細な肉質と上品な甘みを極限まで引き出す調理法として、今や全国に普及している黒豚しゃぶしゃぶですが、その歴史の原点は1978年(昭和53年)創業の「黒豚料理 あぢもり」にあります。
創業当時、豚肉といえば「特有の臭みがあるため、濃いタレやポン酢でごまかして食べるもの」という先入観が根強く残っていました。しかし、純粋バークシャー種である鹿児島黒豚本来の芳醇な旨味と脂の融点の低さに着目した創業者は、試行錯誤の末に「調味料の味ではなく、肉そのものの出汁と旨味を融合させる」という前代未聞の調理法に辿り着きます。これが、日本初の「あぢもり スープしゃぶしゃぶ」の誕生です。
鍋に張られるのは、門外不出の配合で引かれた透き通る和風出汁。そこに極薄にスライスされた黒豚をくぐらせ、溶き卵を絡めて口に運ぶスタイルは、すき焼きとも従来の水炊き風しゃぶしゃぶとも一線を画す深いコクを生み出します。ポン酢の酸味に頼らず、肉の脂の甘みを出汁で包み込むこの技法は、鹿児島の郷土料理界に革命を起こし、現在の全国的な黒豚ブームの確固たる礎となりました。