観光客が東尋坊を訪れて最も驚くのが、「なぜこれほど危険な崖っぷちに柵や手すりがないのか」という点です。その決定的な理由は、法的な規制と地形的な制約にあります。
東尋坊は国の「天然記念物及び名勝」に指定されており、同時に「越前加賀海岸国定公園」の特別地域に該当します。文化財保護法や自然公園法により、自然のままの景観を改変する工作物の設置が厳しく制限されているのです。岩肌に杭を打ち込んでフェンスを張り巡らせることは、世界的に価値のある地質学的景観を損なう行為とみなされます。
さらに、岩壁そのものが柱状に亀裂の入った岩の集合体であるため、基礎工事を行って頑丈な柵を長期間維持することが物理的にも困難という工学的な事情もあります。行政側は看板の設置や遊歩道の整備で注意喚起を行っていますが、「景観の保存」と「安全の確保」の境界線上で今なお議論が続いています。