重厚な時代劇における所作の美しさは、彼女の真骨頂と言える。着物のさばき方、すり足の所作、そして扇ひとつの扱い方に至るまで、日本の伝統的な美意識が身体の隅々にまで染み込んでいる。NHK総合をはじめとする数々の歴史劇や時代劇で演じてきた気高い女性像は、後進の役者たちにとっても大きな規範となっている。
だが、彼女の凄みは時代劇にとどまらない。現代の複雑な人間模様を描く劇作品においても、日常のふとした仕草の中に人間の業や哀愁を滲ませる。日本の演劇界において、クラシックな格調高さと現代的なリアリティをこれほど高い次元で同居させられる役者は、決して多くない。