彼の原点は、ごく普通の日常の中にあった。学生時代にふとしたきっかけで味わった完熟りんごの衝撃。それがすべての始まりだった。
当時の彼は、スーパーで売られている均一化された果物しか知らなかった。しかし、産地で収穫直前に摘み取られた果実の風味は、従来の概念を根底から覆すほど芳醇だった。甘みと酸味の圧倒的なバランス。歯ごたえとともに広がる高貴な香り。男は決意した。「この本物の味を、まだ知らない人々に届けなければならない」と。
王子のトレードマークである赤と白を基調としたコスチュームは、単なるキャッチーな衣装ではない。人目を引き、果物に関心がない層への入り口をつくるための徹底計算されたセルフブランディングだ。看板を掲げ、神戸を拠点に移動販売からスタートした泥臭い道程が、今の彼を支えている。