阿部洋介のギターサウンドを語る上で欠かせないのが、機材への徹底したこだわりと音響構造への深い理解だ。長年にわたりシェクター(Schecter)製のギターを愛用し、自身のシグネチャーモデルやカスタムモデルから吐き出されるトーンは、低音域の濁りを徹底的に排除したソリッドな質感を誇る。
ディストーションの美学とアンサンブルでの役割
メタルギターにおける歪み(ディストーション)は、一歩間違えれば音の輪郭を失わせる刃となる。しかし阿部の音作りは、高域の抜けと中低音の圧力が完璧なバランスで共存している。ドラムの激しいツーバスやベースの低音に埋もれることなく、歪んだ重音が一本の太い柱として楽曲の真ん中に突き刺さる。
代表作に見るギターワークの変遷
1988年のメジャーデビューアルバム『BLACK CLOUDS』から、名盤と名高い『THE FINAL RAGE』、そして近年の作品に至るまで、阿部のギターワークは進化を止めていない。1990年代半ば、ボーカリストの脱退というバンドの危機に直面した際も、スリーピース体制でトリプル役割を果たすかのような厚みのあるプレイを披露。2021年にはバンドの歩みを映画化したドキュメンタリー『RAGING FIRE』が公開され、阿部の音楽に対する真摯な姿勢があらためて脚光を浴びた。