ネット上のコミュニティや体育館の片隅で長年信じられてきた「ガットを硬く張るほどシャトルが飛ぶ」という説は、物理学的には明確な誤りです。ガットがシャトルを前方に打ち出す主たるエネルギー源は、インパクトの瞬間にガット面がたわみ、それが元の形状に復元する際に生じる「トランポリン効果(反発力)」にあります。
低テンションで張られたガット面は柔軟にたわむため、比較的小さなスイングスピードでも効率的にシャトルへエネルギーを還元し、少ない力で大きな飛びを生み出します。一方で、高テンション(25ポンド以上など)に張り上げたガット面はまるで「コンクリートの板」のように硬化します。この硬いガットをたわませるためには、プロ選手レベルの圧倒的なスイングスピードと強靭な手首の回内外運動が必須となります。
十分なスイングスピードを持たないプレイヤーが高テンションのラケットを振ると、ガットが十分にたわまないままシャトルが弾き出されてしまい、結果として「しっかり振っているのにクリアが奥まで飛ばない」という現象が発生します。スマッシュスピードとガットテンションの相関においても、プロが超高テンションを好むのは「飛距離を伸ばすため」ではなく、球離れの早さによる繊細なコントロール性やシャトルを潰して初速を稼ぐ技術があるからに他なりません。