行政の世界に目を向けると、同じ国家機関でありながら、所管する省庁によって優先される読み方が異なるという興味深い現象が起きている。
戸籍法を所管する法務省の手続きにおいて、子どもが生まれた際に提出する「出生届」は、伝統的に「しゅっしょうとどけ」と読まれるケースが多い。法務省の登記・戸籍実務の現場では「しゅっせい」「しゅっしょう」のいずれも通じるものの、窓口実務や一般への案内では長年の慣用である「しゅっしょうとどけ」が定着している。
対照的なのが厚生労働省だ。国の基幹統計である「人口動態調査」において、同省は「合計特殊出生率(ごうけいとくしゅしゅっしょうりつ)」や「出生数(しゅっしょうすう)」といった統計用語に「しゅっしょう」の読みを一貫して採用している。医療や福祉、公衆衛生の領域では「しゅっしょう」という音がデファクトスタンダードとなっており、省庁の管轄領域によって慣用が使い分けられているのが実情だ。