土木工学の観点からも、この建築物は極めて特異な価値を放っている。日本国内で片手で数えるほどしか存在しない重力式アーチダムという形式を採用。自重で水圧に耐える重力式の力強さと、両岸の岩盤へ荷重を逃がすアーチ式の合理的な曲線を掛け合わせた、ハイブリッド構造の結晶だ。
壁面を描くゆるやかな弧は、極限まで無駄を削ぎ落とした機能美そのもの。過酷な豪雨や水圧を受け止めるべく緻密に計算された躯体は、半世紀以上の年月を経た今なおびくともしない。現地で間近からそのカーブを見上げれば、当時の技術者たちが描いた理想と情熱が静かに伝わってくる。