長月という名称の由来については、平安時代以降の歌学書や江戸時代の国学研究において様々な議論が交わされてきました。現在最も広く受け入れられているのは「夜長月(よながつき)」の略語説ですが、それ以外にも当時の人々の生活様式を色濃く反映した説が複数残されています。
文献や語源研究で取り上げられる主な4つの説は以下の通りです。
① 夜長月(よながつき)説【最有力説】
秋分(現在の9月23日前後)を過ぎると、昼間の時間が急速に短くなり、日没から日の出までの夜の時間が目に見えて長くなります。古の人々が「夜が長く感じられる月」として「夜長月」と呼び、それが転じて「長月」に縮まったとする説です。平安時代の『奥義抄』など多くの古文献でもこの説が支持されています。
② 稲刈月・穂長月(ほながつき)説【農業文化視点】
日本古来の稲作信仰に基づく説です。秋に実った稲の穂が豊かに実り、長く垂れ下がる様子を表した「穂長月(ほながづき)」、あるいは稲を刈り取る時期を指す「稲刈月(いねかりづき)」が訛って長月になったと考えられています。民俗学的にも説得力を持つ解釈の一つです。
③ 長雨月(ながめつき)説【気候視点】
この時期特有の気象現象である「秋雨前線」や台風に伴う長雨に由来する説です。「長雨(ながめ)」の降る月という意味から「長雨月」となり、それが「長月」へと変化したとされています。古語において「ながめ」は「長雨」と「物思いに耽る(眺め)」の掛詞として和歌に頻出することからも、情緒的な裏付けを持ちます。
④ 名残月(なごりのつき)説・無形月説
行く秋を惜しむ「名残(なごり)」の感情から名付けられたとする説や、実りの秋を迎えて物事が成就していく過程を見守る月の意など、精神文化に基づいた説も提唱されています。