丘の象徴として圧倒的な存在感を放つクラーク博士像。右手を遥か彼方へと真っ直ぐ伸ばすその立ち姿は、誰もが一度は見たことのある有名すぎるシルエットだ。しかし、この全身像がこの地に建てられた背景に、かつてキャンパスを揺るがした大騒動があった事実はあまり知られていない。
もともと、ウィリアム・S・クラーク博士の記念像は、博士が初代教頭を務めた北海道大学の構内に胸像として置かれていた。ところが昭和40年代、空前の観光ブームが到来すると、静寂を保つべきキャンパス内に観光バスが次々と乗り入れ、授業や研究に深刻な支障をきたす事態に陥った。大学側の苦渋の決断を受け、1977年の構想100周年を機に、彫刻家の田畑一作によって新たに作られたのが、現在のさっぽろ羊ヶ丘展望台に立つ全身像である。
右手が指し示す先は、特定の地名ではない。「遥か彼方にある永遠の真理と野望」だ。像の台座には有名な教えが刻まれており、かつての開拓者たちが抱いた熱い情熱が、今も風に乗って力強く伝わってくる。