本作の爆発的な推進力となったもうひとつの要素が、ライアン・ゴズリング演じる「ケン」の存在感だ。常にバービーの添え物として作られ、「バービー&ケン」という記号でしか存在を許されなかったケンの苦悩と暴走を、ゴズリングは全身全霊のコミカルさと哀愁で見事に演じきった。
劇中で披露される楽曲「アイム・ジャスト・ケン」に見られるような、過剰なマスキュリニティのパロディと悲哀。これは有害な男らしさを単に断罪するのではなく、家父長制のプレッシャーに押しつぶされそうな男性たち自身の解放をも示唆している。ハリウッド映画産業が長年描いてきたステレオタイプな男性ヒーロー像に対する、極めて現代的で知的なカウンターパンチだった。