タッパーなどで大きな透明氷ブロックを作った愛好家が次に直面するのが、「どうやって美しくグラスに収めるか」という整形の壁です。せっかく時間をかけて作った透明氷も、包丁やピックの入れ方を誤ると、内側からバリバリと無残に割れてしまいます。ここでは、バーテンダーの現場技術をベースにしたウイスキー用丸氷の失敗しない削り方を解説します。
氷を割らずに加工するための最大の秘訣は、「テンパリング(温度戻し)」です。冷凍庫から出したばかりの氷は表面温度がマイナス15℃以下になっており、極めて脆く硬直しています。この状態の氷に刃物を当てると、急激な局所応力によって内部全体にクラック(亀裂)が走ります。氷をまな板の上に取り出し、常温で5分から10分ほど放置してください。表面の白っぽい霜が消え、全体が濡れて「汗」をかいた状態(表面温度が0℃近辺)になってから刃を入れるのが鉄則です。
ブロックから角氷を切り出す際は、家庭用の三徳包丁やパン切り包丁を氷の表面に当て、峰(背)の部分をすりこぎ棒やゴムハンマーで軽くトントンと叩きます。全体に浅い溝(ガイドライン)を全周にわたって彫り、その溝の上から刃を立てて鋭く叩くと、まるでガラスを割るように驚くほど真っ直ぐ綺麗な板状・立方体に割ることができます。
そこから丸氷へと成形する場合は、小回りの利くペティナイフまたは鋭利なアイスピックを使用します。まず立方体の角(8箇所の頂点)を削り落として多面体を作り、次に残った稜線を少しずつ削ぎ落としながら球体に近づけていきます。この際、力を込めて氷を叩き割るのではなく、刃先で氷の表面を撫でるように「薄く削り落とす」イメージを持つことが失敗を防ぐコツです。最後に手のひらの体温で包み込むように転がして表面の凹凸を溶かし馴染ませれば、グラスの中で宝石のように輝く真球のロックアイスが完成します。