ジコ坊の第一印象は、丸っこい体型に愛嬌のある笑顔を浮かべた、どこか憎めない旅の僧侶だ。しかし、その仮面の下には恐るべき身体能力と政治的手腕が隠されている。一本歯の下駄を踏み鳴らして巨岩を軽々と飛び越え、巨大な猪神の突進をかわす俊敏さ。そして高射砲のごとき石火矢衆を率い、唐傘連という暗部を自在に操る統率力。彼は単なる宗教者ではなく、戦国前夜の修羅場を幾度も潜り抜けてきた特務工作員そのものと言える。
小林薫の絶妙な声演は、このキャラクターの多面性を鮮やかに際立たせている。飄々とした世間話から一転、作戦命令を下す際の低く鋭い声調への変化。善と悪、情と冷酷さが同居する人間臭さこそが、公開から四半世紀を超えた現在でも多くの視聴者を魅了してやまない理由である。