吉田カバンの歴史を語る上で欠かせないのが、1983年に発表された「PORTER TANKER」シリーズだ。米空軍のフライトジャケットMA-1をモチーフにしたこのナイロン鞄は、発表当時、業界に衝撃を与えた。これを企画・開発したのが次男の吉田勝之である。さらに1984年にはミリタリーテイスト溢れる「LUGGAGE LABEL」を立ち上げ、ブランドの黄金期を築き上げた。
長年にわたり株式会社吉田のクリエイティブの要として活躍した勝之だったが、病魔との闘いを経て2000年代半ばに同社を離れる決断を下す。社内の役員という立場を離れ、自らの美学を純粋に追求する道を選んだ瞬間だった。この出来事は、創業家の血を引く天才デザイナーが新たな伝説へと踏み出す転換点となった。