突然の内転筋の痙攣に襲われた際、最もやってはいけないのが「慌てて力任せに脚を開いて引っ張る」ことです。ふくらはぎのこむら返りであればつま先を手前に引く処置が知られていますが、太ももの内側にある大内転筋や長内転筋は複雑な走行をしており、急激な牽引は重度の筋断裂(肉離れ)を誘発する恐れがあります。
太ももがつった時の応急処置として最も安全かつ効果的な手順は、以下の3ステップです。
ステップ1:膝を立てて股関節をリラックスさせる
仰向け、または座った状態で両膝を軽く曲げて立てます。内転筋群は股関節を外側に開きすぎても、内側に閉じすぎても緊張します。「軽く脱力した状態で足裏を床につける」姿勢を取り、患部の筋肉にかかる張力を速やかに逃がしてください。
ステップ2:手のひら全体で包み込むように温めながらさする
痙攣を起こしている部位は、急激な血管収縮によって局所虚血に陥っています。爪を立てて強く揉みほぐすのではなく、手のひらのぬくもりを伝えるように、太ももの内側を膝から脚の付け根(鼠径部)に向かって優しく撫で上げます。蒸しタオルやカイロがあれば、患部に当てて温めるだけでも筋緊張の緩和が早まります。
ステップ3:深呼吸とともにミリ単位でゆっくり膝を外側へ倒す
痛みのピークが引いてきたら、立てた膝を手の力で支えながら、外側へ向けて数センチずつゆっくりと倒していきます。このとき「痛気持ちいい」と感じる手前で止め、15秒から20秒ほど静止します。筋肉のセンサーである筋紡錘(きんぼうすい)の過剰な興奮を鎮める意識で行うのが鉄則です。
激痛の発作に対して即効性を発揮する頓服薬として、臨床現場で第一選択となるのが漢方薬の「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」です。構成生薬である芍薬と甘草が筋肉の急激な収縮を抑え、服用後およそ5〜10分で速やかな鎮痛効果をもたらします。寝室の手が届く場所やスポーツバッグに常備しておくと、いざという時の心強い防波堤となります。