1969年、彗星のごとく歌謡界に現れた一人の少女がいた。それが藤圭子だ。彼女の歌声は、当時の高度経済成長に沸く日本社会の裏側にある、人々の孤独や哀愁を容赦なくえぐり出した。黒いドレスをまとい、冷たい瞳でギターを抱えて歌う姿は、単なるアイドル歌手とは一線を画していた。
デビュー作「新宿の女」から「女のブルース」「圭子の夢は夜開く」と続くヒットチャートの席巻は、社会現象そのものだった。彼女が歌ったのは、単なる失恋ソングではない。生きることの痛み、そして逃れられない宿命だ。その圧倒的なリアリティが、当時の若者たちの心を掴んで離さなかった。