ネット上の情報で頻繁に見受けられる最大の誤解は、「ハナテンは経営危機に陥って潰れた」という言説です。しかし、公開されている過去の財務諸表や有価証券報告書を振り返ると、ハナテンはリーマンショックなどの波を受けつつも、関西圏の物流拠点とオークション事業に支えられ、極端な債務超過に陥っていたわけではありませんでした。
では、なぜ身売りを選択したのか。そこには2010年代以降の自動車流通市場における「スケールメリットの絶対性」という構造変化がありました。インターネットの一括査定サービスが普及したことで、地域密着型企業であっても全国規模の資本力を持つ企業と同じ土俵で広告・査定競争を強いられるようになったのです。単独での関西防衛に限界を感じた創業家・経営陣が、成長著しかったビッグモーターとの合流を選んだのは、当時の資本主義の論理としては極めて合理的な判断でした。
しかし、その結果として半世紀かけて築き上げた「ハナテン」という唯一無二のローカルブランドが完全に塗り潰され、後のビッグモーターの不祥事報道の渦中において「元ハナテンの店舗」として巻き込まれる形となったことは、日本の地方発祥有力ブランドが直面したM&Aの光と影を象徴しています。