Excelで標準偏差を算出する際、最も多くの利用者が直面する壁が関数の選択である。結論から言えば、手元にあるデータの性質によって「STDEV.P関数」と「STDEV.S関数」を明確に使い分けなければならない。
末尾の「P」はPopulation(母集団)を意味する。調査対象となるデータ全体(全数データ)が完全に揃っている場合に用いるのがSTDEV.P関数だ。例えば、社内全社員の健康診断結果や、自社工場で一ヶ月間に製造された全製品の寸法データなどがこれに該当する。母集団そのものの平均からの散らばりを正確に弾き出す計算式だ。
一方の「S」はSample(標本)を表す。全体から一部を抜き出したサンプルデータから、未知の母集団全体のバラツキを推測する際に使用するのがSTDEV.S関数である。全国の消費者を対象としたアンケート調査や、大量生産ラインからランダム抽出した検品データなどが典型例だ。統計学的な補正(自由度 n-1 で割る処理)が施されており、標本特有の偏りを緩和する設計になっている。
実務での選択基準はきわめてシンプルだ。「今あるデータが全データなのか、それとも一部の抽出なのか」。この問いに答えるだけで、誤った分析による意思決定ミスを劇的に減らすことができる。