彼女の原点は、東京・銀座に構えた伝説的クラブ「姫」にある。政財界の重鎮から文化人までが集うサロンのような空間で、彼女は夜ごと繰り広げられる人間ドラマの目撃者となった。グラス越しに交わされる本音と建前、嘘と情念。その冷徹なまでの観察眼こそが、後に作詞家として開花する豊かな土壌となったのだ。
作詞の専門教育を受けないまま楽曲制作の世界へ飛び込んだ彼女のスタイルは、従来の作詞家とは一線を画していた。型にとらわれない大胆な単語の羅列と、情景が鮮明に浮かび上がるフレーズ。夜の世界で培ったリアルな視線こそが、数々のヒット曲誕生に隠された最大の秘話であり、彼女だけにしか書けない言葉の源泉だった。