東京・銀座の歌舞伎座。連日満席の熱気に包まれる客席の視線を一身に浴び、舞台上で見事な見得を切る十三代目 市川團十郎 白猿の姿がある。大名跡の継承に伴う一大イベントであった「十三代目市川團十郎白猿襲名披露」から月日が流れ、彼はいまや名実ともに成田屋の大黒柱、そして歌舞伎界全体の牽引役として君臨している。十八番の演目『助六由縁江戸桜』で見せる圧倒的な華と色気は、円熟味を増した当代随一の役者ならではのものだ。
しかし、舞台の成功と比例するように周囲のざわめきは増している。歌舞伎界という場所は、個人の芸だけでなく「家」の存続と内助の功が極めて重視される世界だ。劇場のロビーで贔屓筋に頭を下げ、楽屋を取り仕切る「ご贔屓筋への挨拶や差配」を担う梨園の妻の不在は、年数を重ねるごとに興行面での課題として浮き彫りになってきた。