半世紀以上にわたり認知されてきた国民的キャラクターの姿を根本から変える決断には、当然ながら社内外からの反発やリスクが伴います。それでもなお、ヤンマーがこれほど大胆なリニューアルの理由を推し進めた背景には、企業の生存をかけた構造的な転換がありました。
最大の理由は、ヤンマー自身の事業領域とグローバル戦略のシフトです。従来のヤンマーは、国内の「農機具・ディーゼルエンジンメーカー」としての認知が強固でした。しかし、現在のヤンマーホールディングスは、エネルギーシステム、産業用ロボティクス、マリン事業、水素エネルギー活用など、世界規模で持続可能な社会を支える「総合テクノロジー企業(A SUSTAINABLE FUTURE)」へと舵を切っています。
海外売上高比率が年々高まるなか、海外のZ世代やデジタルネイティブ層に対して、従来の「昭和的なマスコット」では企業の最先端技術や未来へのビジョンを伝えきれないという課題に直面していました。公式発表においてヤンマーは、新デザインの目的を「心を動かし、未来を動かすワクワクを届けること」「国境や世代を超えて共感される存在になること」と明言しています。
単なるPR用マスコットにとどまらず、世界に通用するIP(知的財産)コンテンツとして自立させることこそが、9代目誕生の決定的な動機だったのです。