駅伝ファンの間でしばしば語られるのが、「実業団や大学のエースをアンカーに置けば、前半のビハインドはどうとでも挽回できる」という言説です。しかし、これはひろしま男子駅伝における最大の盲点であり、誤解です。
この大会の全走行距離は48.0kmと、箱根駅伝(往復217.1km)や全日本大学駅伝(106.8km)と比較して極めてコンパクトです。そのため、1区間あたりの比重が非常に重く、序盤で1分以上の差をつけられてしまうと、どれほど強力な社会人エースであっても物理的に追いつくことが困難になります。
また、海沿いを走る宮島街道のコース特性も見落とされがちです。往路と復路で受ける風向きが微妙に変化し、集団の後ろで体力を温存できる選手と、前を追って単独走を強いられる選手とでは、1kmあたりのエネルギー消費に決定的な格差が生じます。今回の波乱も、ネームバリューにとらわれて単独走の負荷を過小評価したチームが失速し、集団走の利点を活かし切ったチームが浮上するという、コースの罠が生み出した必然の結果でした。