医療関係者の取材や糖尿病患者の診療記録を辿ると、発症初期の段階で尿の異変に気づきながらも、決定的な受診機会を逃してしまうケースが後を絶ちません。
都内の糖尿病専門クリニックに通院する50代男性のカルテには、次のような生々しい証言が残されています。
「朝一番のトイレで、まるでビールを注いだ直後のような泡が水面に残り、一度水を流しても便器の縁に泡の粒が付着したまま残るようになった。ネットで調べると『疲労や脱水でも泡立つ』と書いてあったため、仕事の忙しさのせいにしていた。しかし半年後の健康診断で尿蛋白が3+、HbA1cが9.0%を超えており、すでに腎臓の合併症が始まっていると告げられて目の前が真っ暗になった」
SNSやネット掲示板のコミュニティでも、「便器にこびりつくような泡が気になっていたが恥ずかしくて病院に行けなかった」「甘い匂いがする気がしていたが放置してしまった」という告白が無数に見受けられます。人間には都合の悪い兆候を正常な範囲内と思い込もうとする「正常性バイアス」が働きます。とくに尿の泡立ちは痛みを伴わないため、「明日には治るだろう」と問題を先送りしてしまう心理的トラップに陥りやすいのです。