全国に数あるご当地弁当の中でも、千葉県民が「最強の茶色」と胸を張る存在がとしまや弁当の「チャー弁」です。緑のカバがマスコットの同店は、木更津市、君津市、市原市、袖ケ浦市といった内房エリアを中心に展開しています。なぜラーメンの具材であるチャーシューをご飯一面に敷き詰めるという、極めてシンプルかつ豪胆なスタイルが生まれたのでしょうか。
その発祥の理由は、房総半島の産業構造と深く結びついています。高度経済成長期以降、東京湾沿岸には製鉄所や石油化学コンビナートが立ち並ぶ京葉工業地域が急速に発展しました。過酷な環境で汗を流す工員、未明から東京湾へ船を出す漁師、そして資材を運ぶ大型トラックの運転手たち。彼らが求めたのは、短時間で手軽にかきこめ、失われた塩分と強烈なエネルギーを一気に補給できる食事でした。
現場の胃袋を満たすべく考案されたのが、大鍋でじっくり煮込んだ大判の豚バラ肉を、濃口醤油と砂糖、みりんを煮詰めた千葉伝統の甘辛ダレにどっぷりくぐらせ、白米の上に並べるスタイルです。一口頬張ればタレの染みた白米と脂身の旨味が渾然一体となり、労働者の疲労を吹き飛ばしました。この強烈な体験が口コミで広がり、やがて『秘密のケンミンSHOW』(読売テレビ・日本テレビ系)をはじめとする全国ネットの特番で「千葉 ソウルフード 弁当」の筆頭として紹介され、全国区の人気を獲得するに至ったのです。