国土交通省の最新地価公示を見れば明らかな通り、東京23区の住宅地は依然として強い上昇圧力を保ち続けている。特に城南・城西エリア(世田谷、目黒、杉並)の利便性の高い立地では、土地の坪単価が過去最高水準を更新するケースも珍しくない。これまでは坪300万円台半ばで推移していた中野区や練馬区の閑静な住宅街でも、いまや坪400万円超えの取引が日常的な光景となった。
この相場を押し上げている主因の一つが、都心マンションの価格高騰に伴う「億ション離れ」層の移動だ。三井不動産リアルティなどの大手仲介関係者によると、湾岸エリアや都心周縁部で平米単価が高騰しすぎた結果、専有面積70平方メートル前後で1億数千万円を提示されたパワーカップルが、「同じ予算を出すなら土地所有権が残る一戸建てのほうが広い住まいを確保できる」と判断し、戸建て市場へ舵を切っている。
しかし、住宅評論家の榊淳司氏の視線はより冷徹だ。氏は「マンションから逃げてきた層が押し寄せることで、本来なら手が届きやすかったはずの標準的な建売住宅まで価格が吊り上げられている。金利環境の変化を軽視して背伸びした予算設定のまま参入すれば、将来的な資産価値の目減りに直面するリスクは極めて高い」と警鐘を鳴らす。