金曜の夜十時、テレビ画面から放たれたのは痛快な毒針だった。TBSテレビが放った金曜ドラマ『不適切にもほどがある』は、1986年の昭和から令和へとタイムスリップした中学校体育教師・小川市郎の暴走を描き、日本中に強烈な賛否を巻き起こした。主演の阿部サダヲが見せる怪演は、下品で粗暴でありながら、どこか哀愁と純情を漂わせる。
脚本を手がけた宮藤官九郎の筆致は容赦がない。「チョメチョメ」「ケツバット」といった昭和の遺物を臆面もなく令和のコンプライアンス社会に投げ込み、ミュージカル仕立てで本音を歌い上げる異例の演出。ハラスメントを過剰に恐れて人間関係を希薄化させる現代の欺瞞を、笑いのオブラートで包みながら鋭く抉り出した。単なるノスタルジーへの逃避ではない。時代が切り捨ててきた「不器用な情愛」を問い直す痛烈な批評精神が、毎週のトレンド首位を独占し続けた原動力だ。