役者としての華々しいキャリアを築き上げながら、なぜ彼は茨の道とも言える「演出」の世界へと深く足を踏み入れたのか。その根底にあるのは、日本の舞台作品に対する並々ならぬ危機感と、限りない愛だ。
ただ与えられた役を演じるだけでは満たされない。「劇場という空間全体を包み込み、観客の心臓の鼓動までコントロールしたい」という強い衝動が、彼を演出家へと突き動かした。キャスト一人ひとりの心情に深く寄り添い、セリフの間合いから照明の数ミリのズレ、音響の微細なニュアンスに至るまで妥協を許さない。徹底的なディレクションは時に過酷を極めるが、現場に流れる空気は驚くほど温かい。「愛を持って作品を作る」という彼の信念が、カンパニー全体に浸透しているからだ。