都内の有名スペインバル店主、本格インディアンレストランのスパイス料理人、そして老舗京料理の板前への取材や現場の意見を集約すると、「最後の1枠」に対する見解はさらに深みを増します。
油を使う世界の潮流 vs 水と出汁で勝負する日本料理
現代のグローバルなガストロノミーにおいて、米料理の基本は「油脂(オリーブ油、ギー、羊脂、バター)」と「塩」と「スパイス・ハーブ」です。脂が米のコーティングとなり、強い香りを溶かし込んで舌へ届けます。パエリア、ビリヤニ、ピラフはいずれもこの構造を持っています。
しかし、銀座の割烹で腕を振るう板前はこう指摘します。
「松茸ご飯が世界三大炊き込みご飯に挙げられる理由があるとすれば、それは『世界のどこにもない引き算の美学』です。油を一切使わず、軟水と鰹節・昆布の出汁だけで米を炊き上げ、松茸が持つ天然の揮発性香気成分を米のデンプンに吸着させる。これは世界の米料理から見れば異次元の調理法であり、素材の輪郭だけで勝負する究極の炊き込みご飯と言えます」
つまり、国際的な知名度や伝播力で言えば「ピラフ(またはプロフ)」が圧倒的優位に立ちますが、調理哲学の独創性と唯一無二の洗練度を評価するならば「松茸ご飯」が堂々とその座を競う権利を持っています。この二面性こそが、ネット上で長年議論が決着しない最大の理由なのです。