毘沙門堂を出て西側の岩壁を見上げると、巨大な岸壁に直接彫り込まれた「岩面大仏(がんめんだいぶつ)」が静かに佇んでいる。前九年・後三年の役で命を落とした敵味方すべての霊を供養するため、源義家が馬上から弓の矢じりで彫りつけたと伝わる大日如来坐像だ。
明治二十九年の地震による崩落で胸から下が崩れ落ち、現在は顔と肩の輪郭を残すのみだが、その風化の痕跡こそが千年の歳月の重みを雄弁に物語る。文化庁の指導のもとで保存対策が模索されているものの、風雨による浸食は確実に進んでいる。剥き出しの岩肌と仏顔が混ざり合うその姿は、形あるものはいずれ自然へと還るという仏教の無常観を視覚的に突きつけてくる。