半世紀以上に及ぶレギュラー出演。数字にするのは容易だが、実態は狂気の沙汰に近い。初代林家三平の門下に入り、番組の黎明期に飛び込んで以来、彼が重ねた放送回数は2700回を優に超える。
歴代の強烈な演者たちが舌鋒鋭く世相を斬り、あるいは華麗な謎掛けで客席を唸らせるなか、彼が選んだ武器は徹底した「脱力」だった。答えに詰まれば歌い出し、脈絡なく「木久蔵ラーメン」を宣伝し、司会者に呆れられて座布団を全部没収される。その一連の流れは、様式美を超えた現代の民俗芸能と呼んで差し支えなかった。
知性や教養を競い合うクイズやトークがテレビを埋め尽くす現代において、彼が貫いた態度は異端そのものだった。賢く見せることなど毛頭考えない。むしろ「どうすれば一番気持ちよくバカになれるか」に全神経を注ぎ込む。その愚徹なまでの姿勢が、移り気な大衆の心を55年ものあいだ掴んで離さなかった。