「裏山に逃げようと声をあげた子供たちがいた。なぜその声を聞き入れてもらえなかったのか」
大川小学校で次女の未尋(みずき)さん(当時小学6年)を亡くした元中学校教諭の佐藤敏郎氏は、全国各地で講話活動を行い、そう問いかけ続けている。佐藤氏は遺族会の一員として事故の真相究明に立ち上がり、現在は「小さな命の意味を考える会」などを通じて防災教育の抜本的見直しを訴える。
佐藤氏の証言は、単なる悲哀の吐露ではない。あの日、校庭で子供たちが発していた異変の察知や避難の提案が、大人の「前例踏襲」や「事前の防災計画への過信」によって打ち消された事実を冷静に指摘する。命を守る判断とは、決められた手順をなぞることではなく、目の前の危機に対して柔軟かつ即座に行動を起こすことだという教訓が、佐藤氏の語りから重く伝わってくる。