日光も日輪刀も通用しない完全無欠の鬼の王となった炭治郎を、いかにして人間に戻すことができたのか。その鍵を握っていたのは、元上弦の弐・童磨戦で命を落とした胡蝶しのぶの知略と、栗花落カナヲの覚悟でした。
珠世としのぶが共同開発した「鬼を人間に戻す薬」は、本来は無惨用と禰豆子用、そして浅草の鬼用として作られていました。しかし、しのぶは予期せぬ事態に備え、藤の花から精製した予備の薬を密かにカナヲへ託していたのです。
カナヲは、炭治郎の猛攻が吹き荒れる中、失明のリスクを伴う「花の呼吸・終ノ型 彼岸朱眼」を発動。神速の動体視力で触手の嵐をかいくぐり、自らの胸を貫かれながらも、炭治郎の首筋へ薬を打ち込むことに成功しました。
肉体へ薬が注入されると同時に、炭治郎の内面では極めて象徴的な精神の戦いが繰り広げられます。底知れぬ深淵で炭治郎を引きずり込もうとする無惨の残留思念は、「お前は私の意志を継ぐ特別な存在だ」「外へ戻っても死んだ仲間たちの怨嗟が待っているだけだ」と甘言と脅迫を弄し、炭治郎を繋ぎ止めようとしました。
しかし、炭治郎の背中を押したのは、命を落とした家族たちの祈り、そして遺された仲間たちの無数の温かい「手」でした。禰豆子の必死の呼びかけ、義勇や善逸、伊之助たちの声が炭治郎の自我を揺り動かし、無惨の執着を力強く振り払うことで、炭治郎は見事に人間の心を取り戻したのです。