初めてパッケージを手にした人が驚くポイントの一つが、原材料表示に記された「無果汁」の文字です。「レモン」と名乗りながら、なぜ本物のレモン果汁を一切使わないのでしょうか。その背景には、乳製品製造における明確な科学的理由が存在します。
牛乳に多く含まれるタンパク質「カゼイン」は、レモン果汁のような強い酸に触れると凝固・分離してしまう性質を持っています。生のレモン果汁をそのまま生乳に混ぜると、ヨーグルト状のモロモロとした塊が生じ、サラリとした飲み物としての品質を維持することができません。戦後の開発当時、乳化技術が未発達だったこともあり、開発陣は「本物の果汁を使わずに、レモンの爽やかな風味と甘さを表現する」という独自の調合技術を編み出しました。
栃木県産の新鮮な生乳に砂糖やぶどう糖を加え、そこに門外不出のレモン香料と着色料(紅花色素やビタミンB2など)を絶妙なバランスでブレンドしています。生乳本来のまろやかなコクを生かしつつ、酸味のないミルキーな甘さと鼻へ抜けるシトラスの香りを両立させているのです。果汁ゼロだからこそ実現したこの独自の味わいが、世代を超えて親しまれる最大の秘訣となっています。