会津さざえ堂の最大の秘密は、往路と復路が完全に分離されたスロープ構造にある。内部には階段が存在せず、板張りのスロープが螺旋状に旋回している。参拝者が入口から上り始めると、右回りの斜路を伝って頂上の橋に至る。そこからそのまま反対側の左回りスロープへと接続され、下りへと切り替わる仕組みだ。
二本の螺旋が互いに交差することなく同じ軸の周りを巻き上がるこの配置は、遺伝子のDNA構造と同じ二重螺旋構造そのものだ。前方の参拝者の背中を追いかけて歩いていれば、いつの間にか下りルートに入り、気がつけば建物から外へと出ている。人と人が途中で対面して道を譲り合う場面は物理的に発生しない。18世紀末の日本で、この先鋭的な動線設計が完成していた事実は驚嘆に値する。