2000年代後半、お笑い界に空前のショートネタブームが到来していた。その爆心地となったのが『爆笑レッドカーペット』などの演芸番組だ。あでやかな衣装を身にまとい、男らしい地声と愛くるしい表情のギャップで爆笑をかっさらったのが、サンズエンタテインメントに所属するお笑いタレント、はるな愛だった。
彼女の代名詞となった「エアあやや」は、平成を代表するアイドル松浦亜弥の大ヒット曲『Yeah! めっちゃホリディ』の音源に合わせ、口パクと大げさな身体表現で魅せるパフォーマンス。声を出さないのに誰よりも雄弁。マイクを握り締め、口元を寸分違わず動かす技術は、単なるウケ狙いを超えた圧巻のプロフェッショナル芸だった。
しかし、ブレイクまでの道筋は決して平坦ではなかった。ショーパブの舞台で夜な夜な磨き上げたリップシンクの精度、曲のイントロが流れた瞬間にスイッチが入る表情作り。観客を一瞬で自分の世界に引き込むための演出は、長年の現場経験によって洗練されたものだ。