「居酒屋で提供される料理ならプロが調理しているから安全だろう」という信頼を揺るがす事故が過去に起きています。厚生労働省や地方自治体の食中毒・感染症報告書には、居酒屋でのサワガニ食中毒・肺吸虫症事例が複数記録されています。
感染事例を調査した報告によると、ある居酒屋チェーンでサワガニの素揚げを食べた複数の客が、約2ヶ月後に相次いで激しい咳と胸痛を発症。血液検査で好酸球の異常高値が確認され、宮崎肺吸虫症と確定診断されました。調理場を調査した結果、混雑時に揚げ時間を短縮して提供していたことや、油の温度が規定以下に下がっていたことが判明しています。
さらに、医療機関の手記や患者の証言では、次のような生々しい現場の実態が語られています。
「最初は季節の変わり目の風邪だと思い、市販の咳止めを飲んでいました。しかし1ヶ月経っても咳が止まらず、ある朝、激しく咳き込んだ際に鮮血混じりの痰が出ました。呼吸をするたびに胸の奥に激痛が走り、救急外来を受診したところ『右肺に影があり、肺気胸の手前まで組織が傷ついている』と告げられました。問診で2ヶ月前のキャンプで食べたサワガニの素揚げを思い出し、ようやく駆虫薬(プラジカンテル)による治療に辿り着きました。あと少し診断が遅れていたら開胸手術になるところでした」(30代男性・感染経験者の手記より)
また、調理プロセスにおける盲点として「生きたサワガニを扱った手や調理器具からの二次汚染」があります。生きたサワガニを洗ったまな板や包丁、トングをそのまま生食用野菜や食器に使用したことで、付着したメタセルカリアが口に入り感染したケースも確認されています。調理工程全体の衛生管理が生死を分けるのです。