すもも漬けを語るうえで避けて通れないのが、カップの底を満たす強烈な真紅のシロップです。子どもの頃、親から「そんな色のついた汁を飲むとお腹を壊す」「体に悪いから実は食べても汁は捨てなさい」と注意された記憶を持つ読者も多いのではないでしょうか。ネット上でも長年議論の的となってきたこのすもも漬け赤い汁の真相を、原材料表示と食品衛生の観点から客観的に紐解きます。
現在市販されている製品の原材料ラベルを確認すると、主原料であるスモモ(主に中国産や国産の厳選果実)を漬け込んでいる液は、食塩、醸造酢、酸味料(クエン酸等)、甘味料(サッカリンNa、ステビア)、保存料(ソルビン酸K)、そして着色料(赤色102号)などで構成されています。この毒々しいとさえ形容された鮮やかな赤色は、清涼飲料水や紅しょうが、シロップなどにも広く使われている法定タール色素の赤色102号によるものです。
かつて昭和の時代、合成着色料全般に対する発がん性や健康被害への懸念が社会問題化した経緯があり、その記憶が親世代から子へと口伝される過程で「駄菓子の赤い汁=危険」というイメージが定着しました。しかし、現在の日本国内で流通している原材料は、厚生労働省の食品衛生法に基づく厳格な成分規格・使用基準を完全にクリアしています。日常的に1日数個を口にする程度で健康被害を引き起こすリスクは極めて低いと言えます。
ただし、健康リスクとして現実的に留意すべきは着色料ではなく、「塩分と強い酸度(クエン酸)」の過剰摂取です。すもも漬けは保存食である漬物の一種であるため、1パックあたりの食塩相当量は一般的な駄菓子に比べて高めです。また、胃腸が空っぽの状態で強烈な酸性の調味液を一気に飲み干すと、胃壁に刺激を与えて胃痛や胸焼けを引き起こす可能性があります。「汁をすべて飲むと体に悪い」という都市伝説は、化学的な毒性というよりも、塩分過多と胃腸への物理的刺激に対する生活の知恵から生まれた訓戒だったと解釈するのが妥当です。