古くから日本では、気象や井戸水の濁り、動物の奇行などを総称して「宏観異常現象」と呼んできた。安政江戸地震の折にナマズの騒ぎが記録されて以来、民間伝承としての前兆説は庶民の間に根強く息づいている。ネズミが一斉に街から姿を消したり、深海魚が浅瀬に打ち上げられたりする出来事は、不吉な前兆として人々の記憶に刻まれてきた。
歴史的な古文書を紐解くと、記録者の主観や後付けの解釈が多分に含まれていることも事実だ。大きな揺れに見舞われた後で「振り返ってみればあの行動はおかしかった」と思い起こす心理的なバイアス(確証バイアス)が、伝承の拡散に大きく寄与してきた側面は否定できない。