なぜ、これほどまでに激しい反発が起きるのか。そこには、パンデミックを経てなお日本社会に根強く残る、他者とのフィジカルな距離感に対する敏感さがある。欧米諸国では日常茶飯事の挨拶であっても、握手すら慎重に行う日本のビジネス文化や公的空間においては、頬へのキスは極めて「プライベートな領域」に属するものとみなされがちだ。
特に「元首相の妻」という象徴的な肩書きが、その行為の解釈を複雑にする。日本社会は依然として、公の立場にある女性に対して「控えめで、感情を抑制した」態度を求める傾向が強い。昭恵氏のオープンな身体表現は、そうした無意識の規範を揺さぶるものであった。