作中で圧倒的なカリスマとして君臨するタクミこと一ノ瀬巧。彼の行動原理を紐解く上で外せないのが、あまりにも凄惨な家庭環境だ。アルコール依存症の父、闘病の末に他界した母、そして荒れた家庭環境の中で育った幼少期。彼は自らの手で運命を切り開くため、音楽という唯一の武器に執着するようになった。
日本の音楽業界において、TRAPNESTを頂点へと押し上げた手腕は紛れもなく本物だ。妥協を一切許さないビジネスライクな姿勢と、仲間すら駒として扱う冷徹さ。しかしその裏には「自分がすべてをコントロールしなければ崩壊してしまう」という、根深い人間不信と孤立感が横たわっている。彼にとって音楽は単なる夢ではなく、己の王国を守るための城壁だったのだ。