朝の通勤ラッシュ。手に持たれているのは、エスプレッソでもコーラでもない。耐熱グラスに注がれた黄金色の出汁だ。2026年現在、都心を中心に「出汁のテイクアウト」文化が急速に定着した。専用のペーパードリップで1分30秒かけて抽出する本格派から、窒素ガスを充填してシルキーな泡立ちを楽しませるナイトロ出汁まで、そのバリエーションは留まるところを知らない。
「カフェでラテを買う感覚で、毎朝だしを買っていく人が増えています」と、渋谷でショップを営む店主は語る。砂糖やミルクを含まず、カフェインレスで満足感が高い。デスクワークの合間に口に含めば、グルタミン酸とイノシン酸の相乗効果が脳を優しく覚醒させる。かつておばあちゃんの味だった出汁は、いまや都市のナレッジワーカーたちを支えるマインドフルネス・ドリンクへと進化を遂げた。