『黒革の手帖』といえば、2004年に米倉涼子が演じた原口元子の印象を強く持つ方も少なくありません。米倉版の元子は、自らの欲望と野心を前面に押し出し、屈強な男たちを薙ぎ倒していく「ダイナミックで圧倒的な女王」としての風格が際立っていました。
対する2017年版の武井咲は、当時ドラマ史上最年少となる23歳での抜擢。放送前は「若すぎるのではないか」「悪女の凄みが出せるのか」といった懸念の声も一部で上がっていました。しかし、幕を開けてみればその評価は一変します。
武井咲が演じた元子は、派遣銀行員として社会の理不尽と経済格差を冷ややかに見つめる「等身大の冷徹さ」を帯びていました。感情を押し殺した氷のような視線、淀みのない美しい日本語で相手の急所を突くセリフ回しは、米倉版のギラギラとした野心とは異なる、知性と孤独が同居した「新世代のピカレスク・ヒロイン」として絶賛を浴びることとなりました。