専門家たちは、この独特な精神反応をどのようなフレームワークで説明しているのだろうか。臨床精神医学の知見によれば、空間的孤立と自己感覚の崩壊が重なることで、人間は重度のパニック障害に似た症状を呈する。太古の昔から人類の脳は、足に大地を感じ、周囲の風景を捉えることで安全を確保してきた。その前提が完全に破綻するのが宇宙空間なのだ。
さらに、近年目覚ましい発展を見せる宇宙心理学の分野では、「オーバービュー効果(地球を俯瞰した際の高揚感)」の対極に位置する精神的負荷として、徹底的な孤立感の研究が進められている。逃げ場のない鉄の箱の中で、自分の存在が全宇宙の中で無に等しいという事実に耐えかねる心のメカニズムが、生物学的・心理学的の両面から解き明かされつつある。