この息をのむ景観は、決して偶然の産物ではない。園の創業者である故・樋口正男氏が1968年から山林を開墾し、1977年に開園させた。戦後の混乱期を経て「何かしら自分が生きた証を残したい」という強い信念のもと、一本一本の木と向き合い続けた男の執念がこの場所の土台にある。
園内を彩る主役は、日本古来の名品種であるノダフジ(野田藤)を中心とした22種類におよぶ藤の木々だ。花房が1メートル以上にも伸びる長藤から、ブドウの房のように密集する八重咲き、愛らしい野田紅藤まで、それぞれ開花時期や香りの強さが微妙に異なる。単なる鑑賞用にとどまらず、土壌改良から剪定、棚の設計に至るまで徹底的に計算された造園・園芸の技術と情熱が、樹齢100年を超える古木を今なお力強く花咲かせている。