言葉の命は生きている。近代日本文学を代表する文豪・芥川龍之介の手記や作品世界を紐解くと、予期せぬ運命の暗転や心理的葛藤を描く場面で、衝撃を伝える比喩表現が実に巧みに配置されていることに気づかされる。
江戸期の戯作から明治・大正期の近代文学へと至る過程で、人々が受ける精神的インパクトをどう描写するかは常に作家たちの課題であった。芥川らが追求した真迫の心理描写は、それまでの伝統的な故事成語の枠組みを拡張し、現代の私たちが日常で感じる「寝耳に水」なショックの描写の基礎を作り上げたと言っても過言ではない。